2012年5月19日土曜日

火攻篇・勝って損する

_ようするに、戦いに勝ち、占領しても、戦果を得ることができ
なければ、災いを起こしただけだ。
 名づけて、「費留」と言う。(浪費)
 だから、名のある君主は、これを深く思案し、優れた将軍は、
これを学んで実践する。
 利益がなければ行動せず、得るものがなければ実行せず、
危害が加えられなければ戦わない。
 君主は、怒りの感情だけで軍事行動してはいけない。将軍
は、恨みの感情だけで戦ってはいけない。
 利益に見合えば行動し、利益に見合わなければやめる。
 怒りはいずれ喜びにもどり、恨みはいずれ愉快にもどるが、
国が滅んではいずれ再建できるというものではないし、死んだ
者がいずれ生き返るということもない。
 だから、名のある君主は、これを軽はずみにせず、優れた将
軍は、これを注意する。
 これが、国を安泰にし、軍隊を健全にする考え方だ。

※宣伝がうまくいって、大量の商品やサービスが供給できるよ
うになっても、それが欠陥商品や悪質サービスだったら、社会
に害をもたらし、損害賠償を請求されて大損害になるだけだ。
 ブームに便乗して、得意分野ではない物を扱うと失敗する。
また、ブームはすぐに去ってしまうので、在庫をかかえることに
なり、利益は少ない。
 ライバルとの安値競争やシェア争いは、社会にとってなんの
利益にもならず、企業価値を失うことになる。
 商品やサービスの消費が増えた時こそ、商品管理やサービ
スの向上につとめ、無理な供給になりそうならやめる勇気も必
要だ。
 定番商品や老舗のサービスは、目立たず、邪魔にならず、
人になじむものだ。


それ戦勝、攻取して、その功を修めざるは凶なり。
命(な)づけて費留と曰(い)う。
ゆえに曰く、明主はこれを慮(おもんぱか)り、良将はこれを修
む。
利にあらざれば動かず、得るにあらざれば用いず、危うきにあ
らざれば戦わず。
主は怒りをもって師を興(おこ)すべからず、将は慍(いきどお)
りをもって戦いを致すべからず。
利に合して動き、利に合せずして止む。
怒りはもってまた喜ぶべく、慍りはもってまた悦ぶべきも、亡国
はもってまた存すべからず、死者はもってまた生くべからず。
ゆえに明君はこれを慎しみ、良将はこれを警(いまし)む。
これ国を安んじ軍を全うするの道なり。

夫戰勝攻取、而不修其功者凶
命曰費留
故曰、明主慮之、良將修之
非利不動、非得不用、非危不戰
主不可以怒而興師、將不可以慍而致戰
合於利而動、不合於利而止
怒可以復喜、慍可以復悦、亡國不可以復存、
死者不可以復生
故明君愼之、良將警之
此安國全軍之道也