2012年6月2日土曜日

用間篇・扱いにくい「間」

_こうした、情意を知る「間」を活かすのに5つある。
 それは、「因間」「内間」「反間」「死間」「生間」だ。
 5つの「間」は、一緒に派生し、それがどこから来たのか知るこ
とはできない。これを「神紀(しんき。神のみちすじ)」と言う。
 これらの人が君主の宝となる。
「因間」とは、在野にいる人の中から登用することだ。
「内間」とは、官職にある人の中から登用することだ。
「反間」とは、敵対する者の中から登用することだ。
「死間」とは、民衆を煽動する役割を担い、こちらの「間」がそれ
を実行して、敵の「間」がそれを真に受けて報告するようにするこ
とだ。
「生間」とは、帰郷して、よく喋る口の軽い者のことだ。

 全軍の中でも、「間」をかわいがり、褒賞は「間」に多くし、何事
も「間」に密かに話す。
 聖人並みの知恵者でなければ「間」を登用することはできない。
 慈愛と正義がない者は「間」を役立てることはできない。
 優れた者でなければ「間」の成果を得ることができない。
 細かく心配りをすれば「間」を登用できないところはない。
 ただし、「間」が存在していることが分かり、噂が広まれば、
「間」だと触回る者はもちろん、「間」を登用した者もみな死ぬこ
とになるだろう。

※隠れた賢者や役に立っていない者は、一般的に身分が低く、
扱いにくい。
 法律を無視することも平気な者だったら、命取りになるかもし
れない。だからこそ、活かすことができたらとてつもない力を発
揮する。
 こうした者たちに嘘は通用しない。
 命じるのではなく、目的に向かうことが利益につながることを
見せて、納得させなければ行動しない。
 自分の能力に気づいていない者もいるので、それを気づかせ
るだけの指導力も必要になってくる。
 凡人は、こうした者たちを見下しているので、特別扱いすると
不満をもつ。だから、目立たせないように、凡人の中に潜ませ
る。
 そこまでするだけの価値がある者たちを見つけ出すことだ。

 例えば犯罪者を悪者扱いして刑務所に閉じ込めているかぎり、
なんの役にも立たない。
 犯罪者は能力の使い方を間違っただけで、刑務所内に会社を設
け、能力を正しい方向に働かせるようにすればいい。
 そして、普通の会社と競争させて、高収益を上げる面白さを味
わえば、自分の本当の能力に目覚めるだろう。
 今の日本には終身刑がなく、欠陥のある法の名のもとに死刑と
いう殺人がおこなわれている。
 もちろん、終身刑があっても死刑にせざるおえないような犯罪
を犯した者がいるかもしれない。
 今の欠陥裁判では終身刑がないので、その判断すらできない。
 終身刑があれば、社会には二度と出ることはできないが、刑務
所の中に第二の社会をつくり、経済活動をさせて社会貢献させる
ほうが、罪の償いになるし、文化を発展させることもできるだろ
う。
 先に書いた生活保護費を電子マネーにしたことで生活保護者が
増えて働く人が減り、労働力が足らなくなった場合、こうした受
刑者を活用すれば、経済が停滞することはない。


ゆえに間を用うるに五あり。
因間あり、内間あり、反間あり、死間あり、生間あり。
五間ともに起こりて、その道を知ることなき、これを神紀(しんき)
と謂う。
人君の宝なり。
因間とはその郷人によりてこれを用うるなり。
内間とはその官人によりてこれを用うるなり。
反間とはその敵の間によりてこれを用うるなり。
死間とは誑事(きょうじ)を外になし、わが間をしてこれを知らしめ
て、敵の間に伝うるなり。
生間とは反(かえ)り報ずるなり。

ゆえに三軍の事、間より親しきはなく、賞は間より厚きはなく、事
は間より密なるはなし。
聖智にあらざれば間を用うることあたわず。
仁義にあらざれば間を使うことあたわず。
微妙にあらざれば間の実を得ることあたわず。
微なるかな微なるかな、間を用いざるところなきなり。
間事いまだ発せずしてまず聞こゆれば、間と告ぐるところの者と
は、みな死す。

故用間有五
有因間、有内間、有反間、有死間、有生間
五間倶起、莫知其道、是謂神紀
人君之寳也
因間者、因其郷人而用之
内間者、因其官人而用之
反間者、因其敵間而用之
死間者、爲誑事於外、令吾間知之、而傳於敵間也
生間者、反報也

故三軍之事、莫親於間、賞莫厚於間、事莫密於間
非聖智不能用間
非仁義不能使間
非微妙不能得間之實
微哉微哉、無所不用間也
間事未發而先聞者、間與所告者皆死